デジタルデバイド
(情報格差)への対応
情報にアクセスできない人をゼロに
ますます加速する情報化社会。
新しいテクノロジーを活用する機会を提供することで、住んでいる地域や環境に関係なく、
自由にさまざまな情報へアクセスできる環境をつくりたい。
デジタルデバイド(情報格差)を解消する取り組みを通じて、
誰もが夢や目標に挑戦できる社会を目指します。
デジタルデバイドとは?
インターネットやパソコン、スマートフォン、タブレットなど情報通信技術を利用できる人とそうでない人との間に生じる格差とのことです。情報格差ともいいます。具体的には、都市と地方といった場所によるもの、年齢や所得水準、学歴の有無など個人によるもの、技術者などの人材の有無などによるものがあげられます。
障がいのある子どもの学習と
社会参加を支援
当社と当社子会社のエデュアスは東京大学 先端科学技術研究センターと共に、障がいのある子どものための携帯情報端末の活用事例研究「魔法のプロジェクト」に2009年から取り組んでいます。
プロジェクトに参加する学校に当社からタブレットや人型ロボット「Pepper」※を一定期間無償で貸し出し、学習や日常生活の場での活用を通して、他人とうまく言葉のやりとりができない子どもが、タブレットに文字を表示させることで意思疎通を行い、タイマーの絵を表示するアプリケーションを使用することで「ちょっと待ってね」という抽象的な時間の概念への理解をサポートするなど、コミュニケーションや認知の方法として、ICTの可能性を研究しています。
これまで、一言二言で指示だしのみの会話が精いっぱいで他者とのコミュニケーションが苦手だった子どもが、Pepperとの会話やプログラミングを通じて、自分の感情や意志を自分の言葉で話して伝えられるようになったケースなど、多くの研究成果が生まれています。
ICTの活用により、「これまで思うようにできなかったことが、できるようになる」という経験が、子どもの意欲を高め、それがさらに子どもの「できること」を増やせるように、今後も取り組みを広げていきます。
「魔法のプロジェクト」は、障がいのある子どもたちへの教育における取り組みとして高い評価をいただいています。
- [注]
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- ※ソフトバンクグループ株式会社が実施する「Pepper 社会貢献プログラム」の一環として、本プロジェクトに無償貸与されています。
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プロジェクトの
ネーミングについて
携帯情報端末が、障がいのある子どもの学習や社会参加を支援するさまざまな機能の詰まった「魔法のように便利なもの」として活用されることを祈って名称が付けられました。
またプロジェクト名にある「あきちゃん」とは、音声でのコミュニケーションを苦手とする実在の人物で、あきちゃんが電子ツールを使うことでコミュニケーションが図れるようになったというプロジェクトを企画した、東京大学 先端科学技術研究センター 中邑教授の実体験に基づいたものです。
携帯情報端末を活用した
学習支援研究の取り組み
これまでに、延べ430校の特別支援学校にご協力いただき、そこで蓄積された活用事例を成果報告会の実施や活用事例集として発刊?公開し、「学習や社会参加のバリアフリー」に向けた取り組みを促進しています。当プロジェクトの成果については、「魔法のプロジェクト」サイトにて公開しています。
2019年6月「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」開始
2019年度は、最先端のデバイスや機能を活用して、個々の教育ニーズに合わせた適切な教育支援を実施することを目的としています。「魔法のWallet」というプロジェクト名には、電子マネーなどの進化するテクノロジーを使いこなしてほしいという願いが込められています。
2009年6月 |
携帯電話を使った「あきちゃんの魔法のポケットプロジェクト」を開始 |
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2011年1月 |
iPadを活用した障がい児の学習支援を行う事例研究プロジェクト「魔法のふでばこプロジェクト」を開始 |
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2011年4月~ 2012年3月 |
「魔法のふでばこプロジェクト」において、全国約170校から選ばれた34校の特別支援学校教育現場でiPadを利用した事例研究を実施 |
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2012年1月 |
「魔法のふでばこプロジェクト」での蓄積した具体的な活用事例を、2012年1月に東京大学 先端科学技術研究センターで開催した成果報告会で発表 |
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2012年1月 |
「魔法のふでばこプロジェクト」活用事例集を発行 |
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2012年4月~ 2013年3月 |
生活支援の視点も加えた「魔法のじゅうたんプロジェクト」を開始 |
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2013年1月 | 「魔法のじゅうたんプロジェクト」での蓄積した具体的な活用事例を、2013年1月に東京大学 先端科学技術研究センターで開催した成果報告会で発表 | |
ICTを活用して障がい児の学習?生活支援を行う「魔法のランププロジェクト」を開始 |
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2013年5月 |
「障がいのある子どもたちのための携帯情報端末を利用した学習支援マニュアル」を作成 |
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2014年4月 |
「魔法のランププロジェクト」の成果をまとめた携帯情報端末活用事例集を作成 |
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2014年4月~ 2015年3月 |
通常学級の発達障がい児も対象とした「魔法のプロジェクト2014 ~魔法のワンド~」開始 |
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2015年4月~ 016年3月 |
新たなニーズに対する実践研究と活動普及「魔法のプロジェクト2015 ~魔法の宿題~」開始 |
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2016年4月~ 2017年3月 |
知見やノウハウを教員志望の若手人材と共有する「魔法のプロジェクト2016 ~魔法の種~」開始 |
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2017年4月~ 2018年3月 |
障がいのある児童?生徒にコミュニケーションの幅を広げる「魔法のプロジェクト2017 ~魔法の言葉~」開始 |
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2018年4月~ 2019年3月 |
児童?生徒が支援や配慮を途切れることなく受けられる環境づくり「魔法のプロジェクト2018 ~魔法のダイアリー~」開始 |
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2019年4月~ 2020年3月 |
ICTを活用して障がい児の学習?生活支援を行う「魔法のプロジェクト2019 ~魔法のWallet~」開始 |
テクノロジーを活用し
障がいのある若者の
リーダー育成に貢献
2007年より、障がいのある若者のための進学?就労支援プログラム「DO-IT(Diversity,Opportunities,Internetworking and Technology) Japan」(東京大学 先端科学技術研究センター主催)を支援しています。
このプログラムは、読み書きの困難を抱える小中高生および大学生の進学とその後の就労への移行支援を通じて、将来社会のリーダーとなる人材を育成することを目的にしています。
2011年から、当社の子会社で教育事業を行うエデュアスと共同で、タブレットを活用したプログラムや保護者向けのセミナーを実施し、学びの活性化を支援しています。
今後も、障がいや病気を抱える参加者のコミュニケーション力の向上、また、社会に存在するバリアーを解明し、多様性のある開かれた社会を実現するため、支援活動を行っていきます。
携帯電話で聴覚障がい者の
"知る権利"をサポート
携帯電話やインターネットが、障がいを持つ青少年の学習や自立の促進に寄与しうる可能性に着目し、2008年度よりNPO法人 長野サマライズ?センターに携帯電話を貸し出し、遠隔地にいる通訳者が講義内容などの話者の言葉を要約して携帯電話にリアルタイムで表示させるシステムの実験開発支援を開始するなど、大学法人やNPO法人と共同で、聴覚障がい者の“情報保障※3”(知る権利)をサポートするための「モバイル型遠隔情報保障システム」の普及に取り組んでいます。
- [注]
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- ※3情報保障:身体的な障がいにより情報を収集することが困難な方に対し、代替手段を用いて情報を提供することにより「知る権利」を保障すること。
- ※3
普及に向けて
2009年度以降、新たにこの仕組みを「モバイル型遠隔情報保障システム」と名付け、筑波技術大学をはじめとした大学法人やNPO法人などと共同で、実用化に向けた導入実験を行ってきました。また、2012年度からは、連携大学?機関を中心とした協力により、遠隔情報保障への取り組みを希望する大学を募集して「モバイル型遠隔情報保障システム」の利用実践を重ねています。得られたノウハウなどは、事例集やマニュアルといったコンテンツとして公開していきます。
当社は、今後さらに「モバイル型遠隔情報保障システム」が情報保障の手段として広まり、より多くの方に活用していただけるよう取り組んでまいります。
2009年度 |
筑波技術大学、長野サマライズ?センター、群馬大学、東京大学 先端科学技術研究センター、ならびにMCC HubneTと共同で実用化に向け、大学や小中学校の授業での「モバイル型遠隔情報保障システム」の導入実験を実施しました。 |
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2010年度 |
5月に「モバイル型遠隔情報保障システム」導入実験の成果と報告をまとめた特設ページを、筑波技術大学公式ホームページ内に開設しました。 また、11月に行われたNPO法人 パートナーシップ?サポートセンターが主催する「第7回パートナーシップ大賞」において、「モバイル型遠隔情報保障システム普及事業」が、グランプリを受賞しました。「NPO」と「企業」間に、「大学」のパートナーシップも加わった、3者間での協働事業という点が評価された主なポイントです。 |
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2011年度 |
筑波技術大学をはじめとした全国18の大学?機関が加盟する「日本聴覚障害学生高等教育支援ネットワークa」の呼びかけの下、各大学は聴覚障がいがある学生が、自大学内の学生による情報保障を受けて講義を聴けるよう、人員配置の体制を整えてきましたが、東日本大震災の被災により、被災地域の大学では、この体制を立て直すのに時間とコストがかかるという問題が生じました。 このため、聴覚障がいがある学生が新学期を迎えるのに困難な大学に対して、同志社大学、関西学院大学、立命館大学、早稲田大学など全国13大学の学生によるボランティアが、「モバイル型遠隔情報保障システム」を利用し、遠隔地から被災地域の大学に通う聴覚障がいがある学生の講義受講のサポートを行いました。 この支援活動は、東日本大震災発生直後の3月中旬から準備を始め、被災地域の大学が新学期を迎える5月より開始しました。支援を行う大学の学生ボランティアを中心とした約60名のサポートにより、被災地域の4大学に在籍する聴覚障がいがある学生17名へ、1年間で延べ300こま近くの授業で支援が実施されました。今後は、大学における情報保障環境の整備?向上のため、大学間において定常的な協力関係の構築が進められる予定です。 |
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2012年度 |
東日本大震災被災地域の学生へのサポートの実践により、こうした遠隔支援が有事の際の支援手段として有効であることが確認されるとともに、本支援に関わった大学からは、今後新たな情報保障環境を維持する手法としても取り入れていきたいとの意見が寄せられました。 |
「モバイル型遠隔情報保障
システム」とは
「モバイル型遠隔情報保障システム」は、NPO法人 長野サマライズ?センターが発起した事業(2008年度)から派生し、国立大学法人 筑波技術大学、ソフトバンク株式会社、NPO法人 長野サマライズ?センター、国立大学法人 群馬大学、国立大学法人 東京大学 先端科学技術研究センターおよびMCC HubneTの共同研究グループで開発?実証実験を行ってきたシステムです。聴覚障がい者が学校の講義などを受ける際に、2名の通訳者が連携しながら話者の言葉を要約してパソコン画面に字幕化する「パソコン要約筆記」を、携帯電話を使って遠隔で行うシステムです。携帯電話には、リアルタイムで通訳者が要約した言葉が表示されます。従来の「パソコン要約筆記」というシステムでは、通信ネットワークに接続されたパソコンを用いて、パソコン画面に要約した言葉を字幕化するため、通訳者がその場に立ち会う必要があり、利用できる場所や時間に制約がありました。このシステムを利用することで、通訳者が立ち会う必要がなくなり、移動しながらのシステム利用も可能となったことから、聴覚障がいのある方々が情報を得られる機会が広がりました。
情報通信端末の無償提供などを通じて
情報格差の解消を推進
インターネット通信を活用したサービスやデバイスは年々増えており、ITはQOL(クオリティオブライフ)を支える重要なライフラインへと成長しました。一方で、生活環境や所得などによりインターネットへのアクセシビリティに差が生じることで、情報格差が生まれているといわれています。アクセスできる情報の量が少ないと、生活に便利なサービスや新たな情報に触れる機会の損失につながり、学力や就職、さらには所得水準に影響を与えかねません。
当社では、所得による情報格差への対策の一つとして、貧困が原因で学習の機会を得られない子どもたちや、遺児?孤児などを支える非営利団体へスマートフォンやタブレットなどの情報通信端末を無償で提供しています。また、ソフトバンクのサービスをご利用されているお客様から毎月10円の寄付をいただき、当社が同額をマッチングする「チャリティスマイル」を通じて、それらの団体に寄付を届ける仕組みを提供しています。ICTを通じて、生活環境に関わらず、誰もがインターネットの利便性を実感できる社会の実現を推進していきます。